人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ここは昨日の机の上

突発的に思いついたまま書きなぐった残念な小説その②

誤字脱字文脈崩壊稚拙文章色々残念な小説を思いのまま書いてみる。
続くかどうかは不明。

『三島さん』





 「またそうやって視線を逸らす」
 そんな事を言われても僕にはどうすればいいのかよくわからない。三島さんは放課後の誰もいない教室で僕の膝の上に腰掛けている。
 「何故私が振り向くと顔を背けるの?」
 「だって恥ずかしいじゃないか。自分の膝の上に女の子が座っていて急に振り向かれたら恥ずかしいしハッとするしドキッとしてまともに顔なんか見れないよ」
 僕が放課後一人でボーッと携帯の画面を眺めていると教室の後ろ側の扉がガラッと開いてそこには同じクラスの三島恭子が立っていて僕が何だろうと眺めていると彼女はスルスルと僕のほうに歩み寄ってきて窓際の椅子の背もたれから少し体を浮かせて硬直している僕の目の前で立ち止まった。
 僕が高校に入学して最初の秋。それまで三島さんとは一言も話した事が無かったし、何より僕は奥手で口下手だったし女子と話すのが苦手だった。三島さんは委員長ではないけど、いかにも映画や漫画に出てくる委員長的なキャラの人で、大きな黒縁眼鏡に胸の辺りまで垂れたおさげ髪が印象的だ。前髪は左右に均等に分けられていてそれぞれを飾り気の無いシンプルな髪留めで固定している。身長は175cmの僕と比べるに160cm~165cm程といったところだろうか。細くてスラリと長い脚の、膝がギリギリ見えるか見えないかぐらいまでをスカートが覆っていて、そこから縦に10cmばかり真っ白な地肌を覗かせたかと思うとすぐに紺色のソックスがそれを遮ってしまう。この年齢の男子ならば胸の大きさも気になるところだが、しっかりボタンを留められたブレザーの上からではハッキリとした大きさは分からなかった。大きいようにも見えるし小さいようにも見える。正直言って僕は友達の言うようなAカップBカップの大きさの目安がよく分からない。和弘が「やっぱDカップだよなー」などとよく口にしているが、Dカップと言われても具体的な大きさが想像できないのだ。そういうのは色んな女性と付き合って色んなサイズを見ていくにつれて分かるようになっていくのだろうか。それともグラビアアイドルの写真やアダルトビデオを見ていれば自然に覚えていくものなのだろうか。僕は今まで彼女が出来たという経験は無いが、それは和弘にも言えることで、ならばやっぱり和弘はグラビア雑誌やAVを参考に女性の胸のサイズを推測しているのではないのか。
 「結構正直にものを言うんだ」
 三島さんが上半身を捻って後ろを向いた格好のまま言う。僕の顔から視線を放さない彼女は視線を合わそうとしない僕の顔を見ながら何を考えているのだろうか。しかしそれよりも問題なのは三島さんのお尻に押し潰された状態の僕の股間が、そのお尻を押し退けようとするかのように硬くなってきていることにあった。数枚の布越しとはいえ硬くなり血液を巡らせ脈動する股間の感触は彼女のお尻にしっかりと伝わっているはずである。恥ずかしさのあまり逃げ出したくなったが、膝の上にしっかり腰を据えている三島さんはピクリとも動かない。無理矢理引き剥がして一目散に走り去ってしまえばいいのだが、僕の顔を見つめる彼女の視線はまるで鋭い杭となって僕の体を見えない壁に打ち付けてしているような不思議な感覚があった。
自分でも顔が真っ赤になっているのが分かるし、体は緊張のあまり「だるまさんが転んだ」だとかパントマイムでもやっているんじゃないかってくらいカチコチに固まっていて、それ以上にカチコチに固まった僕の股間が彼女のお尻に押し潰されていて、おそらく三島さんから漂っているのであろうふわふわとした何とも言えない良い香りが僕に考えるという事をさせようとしなかった。携帯を握ったままの右手と、どこに置けばいいのか分からないまま宙に挙げっぱなしの左手がプルプルと震えはじめて、このままじゃどうすることも出来ない、何か喋らなきゃと僕は思い、勢いのまま口を開いた。
「あの・・・さ」
「なに?」
抑揚の無いどこか冷ややかな喋りで三島さんが応える。彼女もまた姿勢を一切乱さずに僕の上に座り続けている。ここに鏡は無いから、自分の顔がどれだけ赤くなっているのかは分からないが、彼女の顔は体温を感じさせないほどに白く透き通っていた。普段は無口で休み時間は教室で本を読んでいるか図書館に行くようなステレオタイプの文学少女といった印象で、まさか何の脈略もなくこんな行動に出るとは思いもよらなかった。
「この・・・これって一体なんなの?」緊張と混乱で声が少し震える。
「これって何が?」
「いや、これっていうのはこの状態のことというか、今していることの意味はなんなのかなって思ってさ・・・」
「意味?」
「だっておかしいよね。普通に考えたらさ。人が見たらびっくりするでしょ」
「人に見られるのがヤなの?」
「それもあるけど、何でこういうことをしてるのか。理由を聞きたいんだけど」
「なんでってなにが?」
「いやだからさ。いきなりこんな事して何もしないでいるのはおかしいでしょ?」
「何かしたいの?」
「何かって何が?」スケベな想像が頭を過ぎる。
「私と何かしたいの?」
硬くなった僕の股間の所為で言い訳は通用しない。が、ぼくの言いたい事はそういう事ではなく、何故このような行動に至ったのかというその理由が聞きたいのだ。三島さんは実は密かに僕の事を好いていて、どう想いを伝えようか悩んだ挙句このような大胆な行動に出てしまったのではないのかという根拠の無い淡い期待が湧き上がる。
「なんで僕の膝の上に座ったの?」
「だめだった?」
「だめっていうかさ、なんでこんな事しようと思ったの?」
相変わらず僕の目を見つめ続けている彼女の目は、どことなく僕を睨んでいるようにも見える。
「ごめんね」
彼女がそう言うと僕の心臓がドクンと跳ね上がった。彼女は悪気があってこんなことをしたのだろうか。もしかして、もしかしてだけど三島さんは誰かにいじめられていて、こうしろと無理矢理命令されたとかそういうことなんじゃないのか。おとなしくて地味な女の子のそういう話はよく耳にする事だ。三島さんはいじめの罰ゲームで、それかもしくはひょっとしたら多分だけど僕になんらかの助けを求めるメッセージを伝えるためにこんなことをしたのかも。実は三島さんはかなりの悪戯っ子で、こうやって僕をからかっているだけという可能性も。
混乱していた頭が余計に混乱してきた。誰かこの状況を説明してくれ。三島さんがこういう行動を起こすに至った経緯を馬鹿な僕にも理解できるように簡単に説明してくれ。納得できるまで聞いてやるから。
膝の上の重しがふっと浮き上がり、膝から足先に向かって血液が循環する感覚が伝わる。三島さんは静かに立ち上がり、教室の出口の方を向いたまま何も言わず、空気を掻き分けるように歩を進める。僕がポカンとしている間に彼女は教室から出て行きどこかに行ってしまった。
「そういえば荷物を持っていなかったな」
心の中でそう呟き、未だ硬くなったままの股間に手を添える。明日からどう顔を合わせればいいものか。ひょっとして彼女は友達に「あたしが膝の上に座っただけであいつ勃起してたよーキャハハキモーイ」と言いふらす気なんじゃないのか。少し不安になるが、股間は元気だ。男の上半身と下半身は別の生物だと言うが、まさにその通りだと思う。

 帰宅してからも僕の勃起は治まらず、部屋に飛び込んで早々に自慰行為を開始する。結局彼女が何をしたかったのか何を伝えたかったのかが理解できず、困惑しながらも絶頂に達した僕はいそいそと後片付けをし、家族がテレビを見ている居間から扉一枚隔てた台所で食事を済ませ、風呂に入りながら三島さんの事を考え、パジャマに着替えてベッドの上に仰向けで横たわりながら尚も彼女の事を思い浮かべる。そのまま眠りに落ちてしまったようで、気が付くと閉じられたカーテンからは白い光が洩れていて、僕は登校の準備を始める。
 高校まで自宅から徒歩約20分の道を歩きながら、今日三島さんと顔を合わせた時にどんな反応をすればいいのか、また彼女はどんな反応をするのか。入学してからこれまで、三島さんをあまり強く意識した事は無かったが、これからはそうはいかないだろう。期待と不安、不安の方が少し大きいが、それらが入り混じったまま僕は教室の扉を開け、三島恭子が昨夜何者かに殺されたというニュースを耳にする。
by maijoy1127 | 2009-11-20 13:26 | 書き物